もしかしたら、私の単なる思い違いかもしれないけど。

私は、有水の事を思い出す。

(有水さんって子、怖かった…)

私を階段から突き落とした時の、あの表情…。

(有水さんは、本気で奈津を奪いに来る。もしそうなったら…)

私は、どう対処していいのか分からない。

あの子が本気になれば、私を簡単に奈津から引き離せる。

それが、凄く怖い……。

『望美ー、携帯鳴ってるよ』

「え?」

誰からだろう?

私は、机の上に置いてある携帯を手に取る。

そこには、『小早川 奈津』と映っていた。

「奈津からだ」

なんだろう?

「もしもし、奈津?」

『あぁ、良かった起きてて』

「どうしたの?」

私は、部屋にある時計に目を向ける。

気づけば、時計の針は十一時を指そうとしていた。

『いや、ちょっと望美のことが心配になって』

「え?」

私を心配してわざわざ…。

奈津の優しさが嬉しくて、私の顔は綻びる。

「ありがとう奈津」

『いや…、それより体の方はいいのか?』

「うん、何ともないよ」

『良かった…。あのさぁ望美』

「なに?」