【奈津】

「よし!奈津くん!」

ボールを蹴る翔は、俺にパスを出す。

「ナイスパス!」

俺は、それを受け取りゴールに向かう。

「一年生相手に、ゴールを決めさせるかよ」

先輩は、ゴールの前で構える。

「俺は、ゴールなんてしない!」

俺は、玲緒にボールをパスする。

「まったく、本当に奈津のパスは計算しないと取れないな…」

ボールを受け取った玲緒は、走り出す。

「速度とボールを蹴る角度の計算。風向き西…、先輩のいる角度は―――」

と、ぶつぶつと計算を始める。

「相変わらず、計算でプレイするよな」

「そうだね」

計算し終わった玲緒は、ゴールに向かってボールを蹴る。

「なっ!」

ボールは、勢いよく曲がり、ゴールへと入った。

「よし!」

「やったー!流石玲緒くん!!」

玲緒の特技は、ボールの速度や角度を計算して、確実にゴールにボールを入れること。

俺と違って、計算でサッカーをやるタイプだ。

「さて、俺のかっこいい姿を、咲楽は見てくれたかな?」

見学している野々原に目を見向ける玲緒だが、野々原はさっきからずっと本を読んでいる。

「あれ?」

玲緒のかけている眼鏡がずれる。

「はははは玲緒くん面白い!そして、咲楽ちゃん、相変わらずだね」

翔は、腹を抱えて笑い出す。

「おい、あまり笑うと玲緒にしばかれるぞ」