【有水】

その頃―――

「本当に信じらんない…」

告白を見事に断られた私は、女子トイレに駆け込み自分の顔を確認していた。

「今日のメイクは完璧だったのに、私を振るなんて考えられない!」

と、トイレの中で叫ぶ。

「それにあの子、私より全然可愛くないのに、あんなの何処がいいのか」

奈津くんが言っていた言葉を思い出す。

『俺その子以外しか考えられないから』

「はははは。笑えるー」

私は、女子トイレから出て体育館に向かう。

「愛なんて、そう長続きしないんだよねー」

『そうそう、有水の可愛さが分からないなんて、変な男だよね』

私の肩に、妖精が座る。

「本当だよね、それにあの子の妖精……。友情の妖精だっけ?笑えるよ本当に……」

私は、誰にも聞かれないように低く笑った。

「でも、私奈津くん欲しいなぁー。ねぇ“フレイア”。奈津くんの部活何処か決まってたよね?」

『確か、サッカー部だよ』

「へー、サッカー部かぁ。パパに頼めば、奈津くん簡単に手に入るかも」

私は、パパに電話をかける。

「もしもしパパ?あのね、相談したいことがあるんだ」

パパなら必ず、私の言う事聞いてくれる。

「そう!小早川奈津…、私の婚約者にしたいの」

私は、笑みを浮かべて廊下を歩いた。

「本当に…、変なことばっか考えるよね」

『その通りだな……』

そんな二人の様子を、二人の影がじっと見ていた。