「どう思うんだろうな…」

俺は、ハヤテを置いてみんなの所へ戻った。

『ちょ、奈津!!』

ハヤテの言葉は、今の俺の中には入ってこない。

誰になにを言われ用が、なにも入って来なかった。

その後も、俺はサッカーの練習に中々集中出来なかった。

そんな俺に呆れた玲緒が「もうお前帰れ」と言われ、無理矢理帰らされた。

「玲緒のやつ…」

でも、玲緒なりのはからいなんだろうと思った。

頭を冷やせという玲緒の気持ちが、伝わってきたし。

『望美のところ、これから行くだろ?』

「もちろん」

俺は、菖蒲病院に向かった。

望美の病室に着いて、中に入ると奈々美さんが帰る支度をしていた。

「奈々美さん、こんにちは」

「こんにちは、奈津くん。お見舞に来てくれたの?」

「はい。これから帰るんですか?」

「ええ、望美の新しい着替えを置きに来ただけだから」

奈々美さんは、望美の頭を優しく撫でた。

「望美、奈津くんが来てくれたわよ」

「……」

二ヶ月も経つと、ガーゼは取ることができた。

でも、万が一の為に酸素マスクは付けている。

望美のことを知った奈々美さんは、ほぼ毎日泣いていたらしい。

最近は落ち着いてきているみたいだけど。

「じゃあ奈津くん、望美のことお願いね」

「はい」

よく見ると、奈々美さんの目元にはくまが出来ていた。

(眠れていないのか…)

俺はたまに夢に見ることがある。

病室にはみんなが集まっていて、望美の顔には白い布が被せられていた。

俺は、首を左右にふる。

(今考えたことは忘れよう)

俺は、荷物を床に置き椅子に座る。

そういえば、ルルの姿が見当たらない。

「ハヤテ、ルルは何処に行ったか知ってるか?」

『ヴィーナスのところに行ってるらしい』

「ヴィーナスのところか…」

ヴィーナスもキセキの泉計画の為に、本格的に動きはじめた。