妖精の心を貴方に2 真紅の妖精

俺は、それも全部ふまえて、望美の傍に居ると覚悟を決めていた。

「ですが、それよりももっと最悪な状態が、彼女には考えられます」

「な、なんですか?!」

俺の体が震えた。

「もしかしたら、望美さんは目を覚まさないかもしれません」

「え…」

医師から告げられた言葉に、俺は何を言えばいいのか分からなかった。

あまりにも突然すぎたんだ。

「目を覚まさないって、どういうことですか!」

頑張って絞り出した言葉がそれだった。

理解できなかった。

なんで望美ばかり、こんな目に遭わないといけないんだ。

「植物状態って言葉を、君は聞いたことがありますか?」

「は、はい…。詳しくは知りません」

テレビとかでよく聞く言葉だった。

「では、説明しましょう。植物状態というのは、呼吸や体温調節、血液循環などの生命維持に必要な脳幹は機能していますが、頭部の外傷や脳への血流の停止などが原因で、大脳の働きが失われて意識が戻らない状態のことです」

「そんな…」

「一つ聞きます、望美さんは前に何度か頭を打っていませんでしたか?」

その言葉に心当たりはあった。

でも、望美は大丈夫だと言っていた。

それが、今になって来たってことかよ…!

「望美の意識は、二度と戻らないんですか?!」

「それは、今のところは…」

俺は、視線をしたに投げた。

「くそ…」

俺の頬を涙がつたる。

(望美…)

その後、俺は望美の病室に行った。

病室には、田星と夏村と、新と水無月だけが残っていた。

「他のみんなは?」

「帰った。もう夜遅いし…」

田星の言葉に、俺は部屋の時計に目を向ける。

田星の言う通り、時計の針は十一時を指そうとしていた。

「お前達は、帰らないのか?」

「今帰るところ…、ホントは帰りたくないんだけど…」

夏村は、望美の髪を撫でる。