【奈津】

「望美遅いなぁ…」

さっき先生から望美が外出届けを出したことを聞いた。

いっしょに帰ろうと思って待っているんだけど。

「電話も通じない」

何かあったのか?

(胸騒ぎがする)

『救急車の音がするな』

「そうだな」

近くで事故でもあったのか?

もう一度望美の携帯に電話をかけようとした時、画面に『田星』と出た。

「もしもし?」

『あっ!小早川!!』

いきなり大声で呼ばれ携帯を離す。

「そんなに大きな声出すなよ」

でも、よく聞くと田星は泣いているように見えた。

「ど、どうした?」

『望美が!!』

「――!」

俺の心臓が大きく跳ねた。

嫌な予感がしたんだ。

『望美が!事故にあったの!』

「なっ!」

『奈津?』

俺は、思わず走り出す。

「お、おい奈津?!」

俺のあとを慌ててハヤテが追いかけてくる。

「どういう事だよ!望美が事故にあったって?!」

『詳しくは分からない。その場に水無月さんがいて』

「水無月が?!」

ますます分からなくなった。

水無月とは、あれ以来話していなかったし。

「どこの病院だ!」

『菖蒲病院よ!』

分かった!今すぐに向かう!

俺は、通話を切ってポケットに携帯をしまう。

『奈津!望美が事故にあったのか?!』

「そうみたいだ!」

菖蒲病院っていうと、ここから近い病院か。

でも、走っていくとなると時間が――!

「望美!」

望美の笑顔が俺の中で浮かぶ。