そして、頷いたヴィーナスは、俺に向き直る。

『お前の言葉、信じよう』

「信じてもらわなくてもいい、どうせ未来は変わらない」

『だが、私もこのまま何もしないつもりはない』

ヴィーナスの後ろに扉が現れる。

『未来に向けて、準備を始める』

「アクを殺せば済む話だろ」

『それは、無理なことだ』

ヴィーナスは、複雑な表情を浮かべていう。

『あの子は、私と同じくらいの力を持つ子だ。簡単には殺せない』

「…だろうな。世界一つ壊そうと考えるやつだし」

俺は、ヴィーナスに背を向ける。

「今から二十四年後、その時に妖精戦争は始まる」

『分かった』

ヴィーナスとオルドは、扉のむこうに消えた。

『ヴィーナス達に話してよかったの?』

「いいんだよ。話さなかったら、あいつらは力を持てない」

そう、俺が過去に来たのにはもう一つ理由があったんだ。

(姉さん達に力をさずけることを、ヴィーナスに仕向けさせること)

あと、もう一つは望美と奈津の仲の修復。

でないと。

「俺、生まれてないし」

日が完全に姿を隠し、夜の時間が始まる。

「さて…」

俺は、笑を浮かべて小瓶を取り出す。

「さっきから、殺気がだだ漏れだったぞ」

『お前が憎いからだ』

小瓶の中で、ヒュプが恨めしそうに見てくる。