俺は、小林先輩に連れられ学園の屋上に来ていた。

いつもなら鍵で閉められている屋上だけど、桔梗祭ということもあって、今日は開いていた。

「望美のことについて話ってなんですか?」

望美の話ってことは、望美と俺の関係を知っている小林先輩だ。

「単刀直入に言わせてもらうよ」

俺は、小林先輩をじっと見た。

「僕は、望美さんが好きだよ」

「…知っています」

小林先輩がそう言ってくるのは、もちろん分かっていたことだ。

薄々気づいていたんだ。

小林先輩の望美を見つめる表情を見たら、そんなこと直ぐに分かった。

「やっぱり、直ぐに分かっていたかな?」

「はい、分かっていました」

小林先輩が自分の気持ちを俺に伝えてくるってことは…。

「小林先輩は、本気で望美を奪いに行くんですか?」

「…いや、僕にはできないよ」

「え…」

てっきり奪いに行くのかと思っていたのに違った。

じゃあ、なんで?

「僕が望美さんに気持ちを伝えても、帰ってくる返事はもうわかっているから」

「わかっている?」

「望美さんは、まだ奈津くんが好きなんだよ」

「――!」

その言葉に、俺は望美の言っていたことを思い出す。

『奈津に伝えなくちゃいけないことがあったの』

それは、つまり俺に…。