「私は…なんてことを…」

その全てを、望美さんは持っていた。

私は、そんな彼女が羨ましかったんだ。

『駄目だよ有水』

「!」

私の目の前に、ヒュプが姿を現す。

「もう、私には無理だよ!フレイアを返してよ…」

私は、その場に座り込む。

『それは無理だよ。僕ちゃんと言ったよね?』

私は、ヒュプとの契約のことを思い出す。

「私には、もう無理だよ!私は、自分が何を欲しがっていたのか、ちゃんと分かったから…」

『そーれーはー、君自身のことだよね?』

ヒュプは、私の目の前に来る。

『でも、君の中にはちゃんと欲望があるよね?』

「欲望…?」

顔を上げ、ヒュプを見る。

『奪っちゃいなよ。何もかも、君が欲しいものを持っている望美から、全て奪っちゃいなよ』

ヒュプの言葉が、私の中でぐるぐる回る。

『望美からすべて奪うためには、君は何をするべきなのかな』

「私が、すべきことは…」

それは、望美を殺すこと…。

「望美を、殺すこと」

『そうそう。ちゃんと僕との契約さえ果たしてくれれば、フレイアは返してあげるよ』

とヒュプが姿を消そうとしたとき。

バン―――

後ろの方で、拳銃を撃つ音が聞こえ、弾が私の耳元を通過するのを感じた。

そして――

『うわぁぁぁぁぁ!』

ヒュプは、突然肩を抱えて倒れ込む。

そこからは、血が滲み出ていた。

「一体…、何が…?」

我に帰った時、後から足音が聞こえてきた。