でも、あの人と話して一つだけ分かった。

(母親は、あんな感じなんだろうな)

少しだけ、この時代に来てよかったと思えた。

この時代に来なければ、俺はあの人の温もりを感じることは出来なかった。

「シンク、文化祭で俺達は一つだけ仕事をするぞ」

『えっ?』

月の光が、俺達を照らす。

「犯人探しだ」

シンクは、嬉しそうに言う。

『分かった!』

あの二人の邪魔をする奴らは、誰だろうと許さない。

人間だろうと、妖精だろうと。

最悪の場合は、妖精の方は殺すしかない。

「まず捕まえるのは、ヒュプだな」

『そうだね。奈津にかかってる術解かなくちゃ』

「あ、それは安心しろ」

『え、なんで?』

俺は、左手の薬指に指輪をはめる。

「ヒュプの力が進行しないように、シンクの力を奈津にまとわせてある」

『い、いつの間に…』

「だって、お前の力を使う方が早いしな」

この時代のあいつは、そんなに強くはない。

なら、シンクの力を使う方が手っ取り早い。

「あとは、ヒュプを聞いてあいつの居場所を聞き出すだけだ」

『あ、なるほど』

それ以外、ヒュプを生かす理由はない。