【奇跡】

病室を出た俺は、気づかないうちに微笑んでいた。

『あ、奇跡笑ってる』

「笑っちゃ悪いか?」

『ううん。そんなふうに笑うの久しぶりだなって』

そうか?

俺は、そんなに笑っていなかったか?

てか、元々笑うタイプでもないし。

奈津と違って。

『良かったねぇ、少しでも甘えられて』

「誰が誰に甘えただと」

『だーかーらー、奇跡が望美に』

俺は、精霊銃をシンクに向ける。

『うわぁ!びっくりした!もう、精霊銃なんて物騒なもの向けないでよ!』

「安心しろ、弾切れた。それに、お前の力がないと撃てない」

『そうだけど、心臓に悪いよ…』

「お前が、変なことを言うからだろ」

俺は、精霊銃をしまい歩き出す。

でも、あの人に優しく撫でられた時、嬉しいと感じた。

それに、胸のあたりも温かくなった。

(あれが、温もりというものなのか…)

俺には、分からない。

温もりがどういうものなのか…。