『なに、この空気』

『ごめんね、奇跡人と話すの久しぶりだから』

「誰がなんだって?」

奇跡は、ギロリとシンクを睨みつける。

『いえ、何でもないです』

そのやり取りが面白くて、つい笑ってしまった。

「奇跡は、大丈夫なの?両親心配してるんじゃ…」

「気にしなくていい」

奇跡は、本を閉じて立ち上がる。

「俺には、両親なんて居ない」

「えっ!」

じゃあ、孤児?

「ご、ごめんね」

「別にいいさ…」

奇跡は、表情を変えることなく、そう言った。

だけど、私から見たら、何処か寂しさを感じた。

「奇跡、ちょっとこっち来て」

「なに?」

奇跡は、私の隣に来る。

「しゃがんでくれる?」

「え…?」

奇跡は、言われるがまましゃがみこみ、私は奇跡の頭を優しく撫でた。

「――!」

奇跡は、驚いて目を見開く。

「あのね、これは奈々美さんが良くやってくれたんだ」

「な、なんで俺なんかに!」

奇跡は、恥ずかしかったのか、少しだけ頬を赤くしていた。

「何でなんだろう…。凄く、やりたくなったの」

やっぱり、恥ずかしかったよね。