【望美】

『あ、奇跡だ。お帰り』

「あぁ」

奈津達が出て行ってか数分、先に奇跡が帰ってきた。

「あれ、奈津は?」

「さぁ、まだ屋上にいるけど、何か考えてんじゃない?」

奇跡は、ドカッと椅子に座る。

「本当に体は、大丈夫なのか?」

「今のところはね、体の節々は痛むけど、医師からは五日もしたら退院できるって」

「…あっそ」

奇跡は、本を出して読み始めた。

「本好きなの?」

「まぁね、一応小さい頃から読んでる」

「へぇ、あのね私の友達に本が好きな子が居てね、もしかしたら話が合うかもね」

「どうかな」

奇跡は、それから黙って本を読み始める。

そのタイトルは、英語で書いてあって分からなかったけど、『fairy』だけ読めた。

「妖精?」

奇跡は、チラッと私を見る。

「あんたさ、親には連絡したの?」

「奈々美さん?多分連絡とってあると思うけど、奈々美さんは今仕事で県外に行ってるんだ」

「…なるほど」

そして、また本を読み始める。