【奈津】

「話しってなんだ?」

奇跡に連れられ、俺達は病院の屋上へと来た。

「話しなんて、そんなの決まってる」

奇跡は、いきなり俺の胸ぐらを掴んできた。

「な、なにすんだよ!」

なんでいきなりこんなことを!

「あんた、あの人が大切か?!」

「――!」

その言葉に、俺は目を見開く。

なぜ奇跡がそんなことを聞いてくるのか分からなかった。

「どっちなんだ!はっきり言えよ!!」

俺は、奇跡の腕を掴む。

「…そんなの決まってるだろ!」

奇跡は、俺から手を離す。

「大切だ」

今の言葉に嘘はない。

俺から勝手に別れを告げて、望美に酷い態度をとったり、望美を避けていた。

だけど、奇跡の言葉を聞いてはっきりした。

俺は、まだ望美が好きなんだと。

「…なら、二度と手放すな」

「分かってる。でも、なんでお前はそんなことを俺に聞いてくるんだ?」

「……」

そこで、奇跡は視線を下に落とす。

「別に、ただの俺の気まぐれ」

「気まぐれかよ」

奇跡は、俺の隣を通り過ぎて振り返る。