『分かった。私もなるべくオルドには気をつける。あと、それとね』

「なんだ?」

シンクは、優しく微笑む。

『望美や奈津達と居ると、凄く楽しいんだ』

「…あっそ」

俺は、窓に足をかける。

「だからって、帰らないなんて言わせないぞ」

俺は、ニ階から外へと飛び出す。

『もう!危ないことしないでよ!』

「この方が手っ取り早いんだよ」

そして、づかづか歩き出す。

「あの人、目覚ましたのか?」

『分かんない。今から戻るとこ』

「…俺も行く」

『ええ?!いいの?!!』

俺は、立ち止まりシンクを睨む。

「お前だけだと不安だからな。それに、もうあの人たちは、俺たちの厄介事に巻き込まれてる」

『じゃあ、奈津に話すの?』

「…いや、話さない」

『な、なんで?!』

俺は、写真を取りだし、月の光に照らす。

そして、写真からは家族のシルエットが映し出される。

「それには、奈津が自分で気づかなくちゃ駄目だ」

『でも…』

俺は、写真をしまう。

「とりあえず、俺はただあの人の様子を見に行くだけだ。余計なことを、話す気はない」

『奇跡の意地悪!』

「それは、お前がよく知ってるだろ」

俺は、病院に向かって歩き出した。

『そうだけどさ…』

シンクは、俺の後ろでぶつぶつ言い始めた。

ま、話したところで過去は変わらない。

これは、シンクにも言っていないことだが。

俺達がこの時代から離れれば、シンクや俺と関わった奴らの記憶の中から、俺達は消去される。

じゃないと、未来に行けないからな。