【奈津】

シンクのことを聞いた俺は、学校ですれ違った男の子のことを思い出す。

すれ違った時何かを感じた。

(もしかして、その子が奇跡だったとか)

シンクを探しに学校に来たことになる。

だけど、校舎へは入らずそのまま帰った。

(何者なんだ…)

しばらく様子見と言ったけど、何か嫌な予感がした。

その時――

『見つけた…』

「え…」

後ろを振り返った時、体に何か刺さる感じがした。

「いたっ!」

首にチクリと痛みが走る。

「奈津?」

「何かに刺されたみたいだ」

「大丈夫?!」

望美は心配そうに見つめてくる。

「多分大丈夫だと思う」

刺されたところからは、痛みも退いてるし、腫れているようにも思えない。

「腫れるようだったら、皮膚科行ってくるよ」

「うん。あまり無茶しないでよ」

「平気だよ」

俺は、望美の手を取って歩き出した。

『上手くいった。じわじわとやっていきたいところだけど、お母さんに見つかる前に、とっととやっちゃお』