【望美】

放課後―――

今日は、少しだけ部活の時間が長引いちゃって、私は急いで片付けをしていた。

「ごめんね望美さん、急いでるのに…」

「いえ、先輩と一緒に絵が描けて楽しかったです」

「そ、そっか」

先輩の頬が赤くなり、リーゼルを奥の方へとしまう。

『そろそろ奈津が待ってる時間じゃない?』

ルルに言われ時計を見ると、針は七時を指していた。

「ホントだ!」

でも、先輩一人に片付けさせるわけにもいかないし…。

「望美!」

「え?!奈津!」

急に美術室の扉が開かれ、そこには奈津が息を切らして立っていた。

「どうしたの?!そんなに急いで」

私は、ハンカチを取り出して奈津の汗を拭う。

「ちょっと、心配になって」

「あ、ごめんね。今片付けてて」

「そっか…、望美が無事ならそれでいい」

何かあったのかと聞こうとした時――。

「望美さん?誰か来た?」

天翔先輩が、リーゼルを片付けて戻ってきた。

「こ、こんにちは」

「こんにちは、君は――?」

「望美を迎えに来ました」

「迎えに…?」

天翔先輩は、数秒考えると答えが出たのか頷く。

「なるほど…。僕は、美術室の部長をしてる、小林天翔です」

「小早川奈津です。よろしくお願いします」

奈津は、天翔先輩に頭を下げる。

「そんな畏まらないでよ、恥ずかしいって」

「す、すみません」

私は、鞄の中に筆箱やノートをしまう。

「すみません小早川さん、彼女にはいつも片付けを手伝ってもらってて」

「あ、いえ…。俺は、別に…」

天翔先輩は、首をかじける。

「ちょっと…、心配になっただけなんで」

準備をし終えた私は、奈津の所へと行く。

「それでは、先に失礼します先輩」

「うん、また明日ね」

先輩は、軽く手を振ってくれて、私達は美術室から出た。