憑代の柩

「……お前が言うと、いちいち軽いな」

「ご不満ですか?」
と訊いたら、いや、と答える。

 ぽかぽかとした陽気。

 見ると、衛は車に外気を取り入れるようにしていた。

 なんだか心地よく、眠くなる。

 衛と一緒に居るのは、不思議に落ち着いた。

 こんなイライラカリカリした奴なのにな、と思いながら、うとうととする。

 夢の中、自分はさっき見た川原に居た。

 何故か衛と並んで座っていて、自分は空を指差し、衛に何か言っていた。

 衛が顔をしかめて見せる。

 私は笑っていた。

 やがて、衛も笑う。
 少し気恥ずかしそうに。

 平和な夢だ。

 そんな穏やかな夢が現実になる日は来ない気がするが。

 この事件が解決したら、私は佐野あづさでも、彼の婚約者でもなくなるのだから。

 しかし、五億四千万か。

 口止め料かな?

 半端な金額だけど、株か何かで儲けたいらない金なのかな、と思った。