憑代の柩

 川の側をぐるっと走って、結局、いつもの道に戻る。

「そろそろ大学の時間か?」

「いえ、もうちょっと。

 あのー、もし、時間があるなら、この間行ったドラッグストア、行きませんか?」

「……何をしに?」

「ちょっと買い足したいものがあるのと、

 ――好きなんです、ぶらぶら見るのが」
と笑ったが、衛は何も答えなかった。

 ちぇっと思いかけたが、車はこの間二人で行った店へと向かっているようだった。

 その白い横顔を見て笑う。

「衛さんも好きなんでしょう? あそこ」

「親切だ」
「そうですか?」 

 少しの間の後、前を見たまま、衛は言った。

「衛でいい」

「はい?」

「お前は僕の婚約者だ。
 衛でいい」

「あー、そうですか。
 はいはい」
と言うと、衛は顔をしかめる。