憑代の柩


 

 病院に着くと、例の別棟の診察室に通された。

 この間まで、入院していた棟だ。

 要は、一通り、身体を見たあとで、

「特に異常はないようだな」
と顔に触り、言う。

 そんな簡単に崩れるような整形なのか? と不安になった。

 で? と椅子を回して、カルテに何か書き込みながら、要は訊く。

「犯人に繋がるような何かはあったか」

「そっちの異常もないんですよね~。

 ああ、そういえば、ちょっとだけ。

 衛さんから聞かれましたか?

 あづささんと関係があったらしい男の人が出てきましたけど」

「あづさと関係のある男が居たのが、何処がちょっとだ」

「いや。
 単に、あの人があづささんを好きってだけかも。

 どちらにしても、犯人じゃないような気がしますよ。

 あづささんだと思っている私に対する話しかけ方とか見てても」

 そう言いながら、さりげなく要が腕の向こうで走らせているペン先を見ていた。