憑代の柩

 



 玄関先で靴を履くために、少し腰を屈めた衛のつむじを見た。

 柔らかそうな髪に巻かれたそれは、頭の真ん中あたりにある。 

 頭を上げようとした衛は、いきなりそれを押さえられ、

「なんなんだっ」
と叫んだ。

「ああ、いえ。
 すみません。

 何かこう、気になるつむじだったんで」

「僕のつむじにダイイングメッセージでも書いてあったか!?」

 そんな怒らなくても、と思いながら、衛を見送る。

「じゃあ」
と手を振ると、振り返り、

「いいから、早く戸を閉めろ」
と言った。

「誰かが訪ねてきたら、開けずに電話しろ」

「新聞の勧誘でもですか」

 そうだ、と言うと、それぎり振り返りもせず、階段を下りていってしまう。

 閉めろと言われた戸を開けたまま、衛の足音が消えていくのを聞いていた。

「過保護な親みたいだなあ」
とノブを掴んだまま、彼の頭の消えた階段の暗闇を見つめ、呟く。