憑代の柩

「あったら、こんなまどろっこしい真似なんかするか」

 まあ、ごもっとも。

「あづささんって、ご親族の方はいらっしゃらないんでしたっけ?」

 確か身寄りがないと聞いたが、と思いながら確認する。

 まあ、そういう状況でなければ、この入れ替わりは成立しなかったわけだが。

「親族は居る。
 家族が居ないだけだ。

 両親が死んだとき、遺産を掠め取ろうとした親族ばかりなんで、付き合いはないと言ってたよ」

 だから、式にも呼ばなかった、と言う。

「突っ込んで訊いて悪いんですが、あづささんのご両親はどうして亡くなられたんですか?」

「……火事だと聞いている」 

 少し迷って、衛は言った。

「別荘が火事になって、助かったのは、あづさだけだったそうだ」

「火事ですか」

「保険金もかなり入ったようだ」

「だから、親戚が群がった、と。

 お宅のお父様のときも、かなり出たでしょうが。

 ま、御剣一族にとっては、はした金ですかね」

 何故だか、金に対しては辛辣になってしまう。

 衛は少し笑って言った。

「今回の件、無事に解決できたら、お前に報酬をやろう」