憑代の柩

 真似することは出来ると語る衛は秀才系の人間だ。

 それがわかっていたから、父親もその家庭教師を連れてきたのだろう。

 人は、天才には一目置くところがある。

 その思考に付いて行けないからこそ、畏怖を覚える。

 息子のために、その言動を学ばせようと思ったのだろう。 

 彼が教師に対してそうであったように。

 親戚連中に彼に対して、一目置かせるために。

「そういえば、お父様は亡くなられたんでしたね」

「別荘に家族と家庭教師とで集まることになっていた」

「パーティか何か」

「大学の合格祝いに。
 ま、祝うほどのことでもなかったんだが」

「本当に一言多いですね」

「父親と、家庭教師が早く着いていたようだ。

 遅れて母と要が。

 僕が行ったときには、もう母だけで。

 要は二人を捜しに行っていた。

 渓谷に張り出すようにして造られたウッドデッキの一部が壊れてたよ。

 で、しばらくして、父の遺体が下流で上がったのさ。

 溺死だったが、落ちた弾みか、強く後頭部を打っていたようだった」