憑代の柩

「いや、ムチ持ってたわけじゃないし。

 まだ笑顔でも見せてくれた方が言うこと聞けたんだがな。 

 要が言うように、淋しい人生だし」
と言う。

「まだ根に持ってるんですね……。

 悪かったですよ。
 余計なこと言って」
と言いながら、テーブルから降りた。

「やっぱ、家庭教師とか居たんですね。

 子供の頃は、学校に行ってなかったとか」

「何処の外国の話だ、それは。

 日本に居たら、強制的に学校に行かされるだろ。

 義務教育なんだから」

「別に家庭教師など必要なようには見えませんが」

「親父が気に入って連れてきたんだ。

 いわゆる天才系の人間で、その思考の飛び方が気に入ったといって、僕の家庭教師にした。

 天才の思考を学ばせようとしたようだが」

「学べるものなんですか、そういうの」

 真似することは出来るな、と衛は言う。

「それで、親戚連中を煙に巻くことは出来た。

 そういう意味では役に立ったな」

 僕はただの凡人だ、とテーブルの上で組んだ指を見、衛は言うが、凡人に天才の真似はできない。