憑代の柩

「今日一日、大学をうろついてみたんですけどね。

 ひとつ、わかったことがありますよ」
と朝炊いておいたご飯を彼の前に置く。

「麻紀さんは犯人ではありません」

「それはわかってる」
 衛は軽くそう流す。

「麻紀はそんなことはしない」

「信頼されてるんですね」

「いや、あいつはそんな得にならないことはしないと言ってるんだ」

「そう考えるのもまた信頼ですよ。

 美味しいですね。
 この麻婆豆腐、あんまり辛くなくて」
と言うと、お前は呑気だなという顔をする。

「で?」
「はい?」

「あづさじゃないと、バレなかったのか?」

「ええ。
 麻紀さん以外には。

 だって、誰とも口きかなかったので」

「あづさは同性には嫌われていたようだからな」

「やっぱり、あれ、貴方のせいですかね?」

「さあな。
 あまり友人とつるむようなタイプではなかったようだから」

「くだらないおしゃべりをする時間こそ、女にとっては至福のときなんですけどね」
と答えながら、婚約者に対するコメントとしては、相変わらず他人行儀だなと思ってた。