憑代の柩

「あ、そういえば、院生なんでしたっけ?

 同い年くらいかと思いました」
と言うと、麻紀は顔を近づけ、

「誰もが若く見られて喜ぶと思ったら大間違いよ」
と言った。

「ああ、いえいえ。
 別にそういう意味じゃないですよー」

 いろいろと面白い人だなあ、と思いながら、麻紀を見送る。

 しかし、いいアドバイスももらった。

 どうやら、私はあまり人と話さない方がいいようだ。

 だが、どのみち、それは無用な心配だった。

 佐野あづさになった自分には誰も話しかけては来なかったからだ。

 相当浮いてたんだな、この人、と思う。

 奇跡の生還を果たした人間に、普通は興味本位でも話しかけてくると思うのだが。

 そういうわけで、それからの時間を、人々の好奇と妬みの混じっているらしい視線を受けながら過ごしすはめになった。

 授業後、教授が、大丈夫かね、と声をかけてくれたのが、唯一の思いやりのある言葉だったか。