憑代の柩


 

 それにしても、全く勝手のわからない大学なので、何処に行っていいのかわからない。

 急いで、授業のある棟に入り、廊下を歩いていると、大層険のある声で、女が話しかけてきた。

「元気そうね」

 まるで待ち構えていたかのようだ。

 腰に手をやり、仁王立ちになって、こちらを見ている。

 白衣を着、髪を結い上げた美人だ。

 だが、その目許は、かなりきつい感じがした。

 それにしても、どっかで見たな、この手の顔、と思っていると、彼女は、

「死ねばよかったのに」
 などと言い出す。

 ストレートな人だなあ。

 いっそ感心しながら訊いてみた。

「あのう。
 もしかして、衛さんのご親戚の方ですか?」

 従妹が同じ大学に居ると言っていた。

 確か名前は――

「御剣、麻紀(まき)さん?」

「……本当なのね。
 記憶喪失って」

 麻紀は上がっていた肩を少しだけ下ろし、そうこぼした。

 彼女なりに、気合いを入れて話しかけて来たようだった。