憑代の柩

「で、警察に、霊に首を絞められましたから、あの人が恨んでいるはずです。

 あの人が犯人です、とでも言うわけなんですか?」

 そう言ってやると、衛は眉根を寄せる。

「衛さん、霊は信じてないはずなのに、結構知識はありますね。

 あづささんに聞いたんですか?」

「あづさも別にそういう世界に詳しかったわけじゃない」

「そうなんですか?」

「小さいときから、ときどきぼんやり見えていただけだと言っていた。

 家系的なものだったのかもしれないな」
と言う。

 そこで少し笑うと、なんだ、と言う。

「衛さんって、しゃべり方、先生みたいですよね。

 教え諭すように言うっていうか。

 ちょっと厳しい数学の先生みたいな」

 そう言いながら、何故、数学なんだろうなと思った。

 頭の片隅に、中年の男の顔がよぎって消えた。

「衛さん、記憶が戻りました!」

 衛がぎょっとした顔をする。

「今、誰か知らない中年のおっさんの顔が!」

 衛は溜息をつき、

「何処の中年のおっさんだ」
と訊き返してきた。