憑代の柩


 


 結局、遅刻しそうになって、衛の車で校門に乗りつけた。

 衛もこの間まで通っていた大学だ。

 まあ、仕事の合間に行っていたようだから、本当に授業の時間しか校内には居なかったのだろうが。

 たまたま通りかかった女の子たちの鋭い視線を受け、佐野あづさとして暮らすのはなかなか大変そうだなと思った。

「おい」

 ドアを閉めようとしたとき、衛が呼びかけてきた。

「お前の首を絞めているのは、あづさじゃない」

「わかってますよ」

「あづさにお前の首は絞められない」

「なんでですか?」

 衛は答えなかった。

「いいから。
 そのことを念頭に置いて、もう一度、首を絞めた人間の顔を確認しろ」

「それ、もう一度、絞められてこいってことですね。

 もう、いっそ、爆破事件の犯人もその霊ってことで。

 ああ、それなら、犯人、もう死んでますよね」

 そう言うと、衛は少し考え、
「霊の世界のことは知らんが、生霊なら、そういうこともあるんじゃないか」
と提案してくる。

「生霊ですか」

 確かに、自分などには生霊か死霊かの判別はつきづらいが。