憑代の柩

「顔は長い髪の陰に隠れていたのでちょっと。
 ま、女でしたね」
と言うと、

「それは――
 生きてない人間か?」
と訊いてくる。

「そうですよ。
 お茶、飲みますか?」
と言うと、それを先に言え、と怒っている。

「なんでですか。

 戸締まりしている部屋の中に、突然、人が現れて、首を絞めたり、うろうろしたりしていたりしたら、それは霊でしょう?」

「お前のルールで物を言うな」

 衛は少し迷うような素振りをしたあとで、朝食が載ったままのテーブルの前、

 ベッドを背に腰を下ろした。

 すぐそこにある台所にお茶淹れに行きながら言う。

「私の首を絞めたんですかね?」

 俯き、カーペットを見ていた衛は怪訝そうに顔を上げた。

「私の首を絞めたんですかね?

 佐野あづささんの首を絞めたつもりだったんですかね? あの霊」