憑代の柩

 


 壊れそうにクラシックな車が教会から少し離れた道に止まっていた。

 中では運転手がかからないエンジンを何度もかけ直している。

 コンコンと窓を叩いた。

 あづさに付いて行っていた八代が厭そうな顔で、こちらを見た。

「もう警察、返してくれたんですか?」
と私が訊くと、

「俺が犯人じゃないからな」
と言う。

 いや、死体をひとつ、始末しましたよね、と思ったのだが。

 窓は半分ほど開いていた。

 どうなってんだか、今どき手動の窓だ。

 海に落ちたときのためだそうだ。

 まあ、彼には必要な機能なのかもしれないが、人が聞いたら、阿呆なのかと思うことだろう。

 その半分ほど開いた窓に手をかけ、言ってみた。

「私も乗せてってくれません?」

「……何処まで?」

「やだな。
 事務所までに決まってるじゃないですか。

 もう、流行さんにも面が割れたことだし」

 無言でいる八代に手を離し、言う。

「私を探偵にしてくれるって言ったでしょう? 先生」