憑代の柩

 なんというか。

 外見と違って、子どもっぽいよなあ、あの人。

 お坊ちゃんだからかな、と思いながら、ブラシを握り締める。

 梳かした髪が白い洗面台に落ち、拾った。

 自分のその髪を廊下側の窓から射し込む朝日にかざして見る。

 ひとつ、気になっていることがあった。

 鏡の前に置かれているあづさのブラシだ。

 奇麗だ。

 まるで使われていなかったかのように。

 それを手に取ろうとしたとき、無意識のうちに、手袋を探していた。

 いや、ないよな、と思ったとき、チャイムが鳴った。

 はいはいはーいと適当な返事をして開けると、衛が立っていた。

 朝っぱらから心臓に悪いほど、整った顔だ。

 間違って、ドアではなく、雑誌のページでも開いたかと思てしまう。

 なんですか?と言うと、

「いきなりドアを開けるな。
 犯人だったらどうする」

 開口一番怒鳴られた。

 肩をすくめたあとで、

「刺されてもとりあえず、腕は掴んでおきますよ」
と言うと、衛は視線を逸らし、

「……笑えないことを言うな」
と言った。