憑代の柩

 だから、『佐野あづさ』のまま殺人を犯すなと言っているのだ。

 それくらいなら、佐野あづさを奇麗なまま爆死させると。

 あの日出逢った少女。

 人を殺してきたのだとすぐにわかった。

 自分と同じ、何かを恨む目をしていたから。

 爆弾に伸ばしかけた手を止める。

 八代という探偵に言われ、自分を思いとどまらせに来た姉の足音が遠ざかっていくのを感じたからだ。

 衛はもう来てくれただろうか。

 美容師たちは席を外している。

 今のままなら、馨も衛も巻き込んでしまうだろうか。

 爆弾の威力の程は聞いていない。

 もう何を考えるのも面倒臭い。

 いっそ、このまま――

 ただ、何もしないだけで死ねるのなら。

 そう思いながらも、今、自分に訪れようとしているその瞬間が怖くもあり、自分を違う世界に――

 いつも見えていた世界に連れていこうとしている花籠を視界から消すように、目を閉じた。