憑代の柩


 
「私、貴方のあと、ファミレスでちょっと働いてたのよ」

 そんなことをあづさは語り出す。

 私は、
「聞きました」
と答えた。

「この間の私と同じように、私と間違えられたみたいですね。

 それで、そのまま働いていたと聞きました」

 自分が病院で寝ていたはずの期間にも、『私』が働いていたと聞かされ、気づいたのだ。


「働かなくていいだけのお金はあったんだけど。

 面白かったわ。

 それで、なんとなく、そのまま近くに住んでいたのよ」

 あづさはなんだか楽しそうにそう言った。

 人を殺し、顔を変えた彼女にとって、久しぶりに訪れた、いや、窮屈だった『佐野あづさ』の時代には訪れたこともなかった日常だったのだろう。

 奏は今の彼女の表情を何処からか見ているだろうかと思った。