憑代の柩

 彼らは近くで、うめき声を上げている美容師たちを介抱していた。

 馨を抱いたまま、控え室を覗く。

 ひどい惨状だった。

 入り口付近に花屋の店員ような格好をした女が倒れていた。

 もう息はしていないようだった。

 そして、その奥。

 かろうじて残っている台と、バラバラに飛び散って燃えた花籠の残骸。

 そして、見るも無惨な女の遺体があった。

 その衣服には見覚えがあった。

 あまり多くの服を持たない佐野あづさ――

 秋川奏のものだった。

 そのとき思いついた。

 今、馨を目撃した彼らと、衛を誤摩化す方法を。

 咲田馨をもう二度と衛の前には現れさせない。

 あの日――

 屋敷の一角で、衛が馨に口づけているのを見た。

 恐らく、それ以上何もなかったのだろうが。

 自然に下ろしている指先が絡んでいることと、馨の衛を見上げる目が、ずっと気になっていた。

 彼女は自分をそんな風に見たことはなかったから。

 でも、彼女はきっと気づかないだろうと思っていた。

 誰かが指摘しない限り、自分の気持ちに。

 そして、衛もまた――。