憑代の柩

 


 痛む腹を押さえた要は、馨を見下ろす八代を見上げていた。

 この女は本当に鈍いな、と思う。

 自分の下心にも、衛の下心にも、この男のにも気づかない。

 結局、それ故の警戒心のなさが、すべての元凶なんじゃないかとかつての恋人――

 というか、無理やり恋人にしていた女を心の中で罵った。

 あのとき、衛より早くに教会に着いていた自分は、外で爆音を聞き、中に踏み込んだ。

 崩壊したコンクリートから上がる粉塵に咳き込み、目をしばたたく。

 半壊した教会。

 夕陽の射し込む廊下に、ウェディングドレスの女が倒れていた。

 それが誰なのか、すぐにわかった。

 破片を避けながら、側に膝をつき、煤で汚れた丸い頬に触れてみる。

「……う」

 苦しそうに馨は呻いた。

 何処か怪我しているのだろうが、たいしたことはなさそうだった。

 消防車と救急車のサイレンが近づいてきた。

 一瞬、迷い、馨を抱き上げる。

 彼女は苦痛に顔をしかめていた。

 すぐに消防士と救急隊員がやってくる。