憑代の柩

 霊体だった真澄は誤摩化せず、彼女はまた私が衛に近づいたことに気がついた。

 だから、夜な夜な、私を絞め殺そうと化けて出てきていたのだ。

「我が親ながら。

 血塗れの人間を前に言いたいことはそれだけですか」

 衛が呆れたように言うが、一度死んでも私の性格がいまいち変わらなかったように、衛の母もまた変わらなかったようだ。

「横領した金は、もう衛が清算してくれましたから」

 だから、貴女に脅される理由はない、と要は脇腹を押さえたまま言う。

 そう。
 それで、その分、私に今回のお駄賃としてくれたことにしてくれるみたいです。

 だから、一応、私が言うのもなんですが、貸し借りなしってことで。

 五億四千万」

「三千万だ」
と要が言う。

 そこで、ひとつ息を吸い、戸口を見た。

 おい、と衛が止めようとする。

「来てください。
 佐野あづささん。

 妹に手を貸してくださって、ありがとうございます。

 でも、もう此処で終わりにしてください」

「脅すだけと聞いていたのにね」と言いながら、あづさは帽子を取った。

 何故だろうな、と思う。