憑代の柩


 


 キャップの女は黙して語らない。

 麻紀の側に居た本田がこちらを窺うように見て訊いてきた。

「やっぱり記憶は戻ってたんですね」

「戻ってたっていうか。
 戻したっていうか。

 本田さんのお陰ですよ。

 貴方とカラオケに行ったり、おばあさまにお会いしたりしたから。

 顔は同じでも、声が違うと、通用する場所としない場所があると気づいたんです。

 普段は顔で誤摩化せても、そうでないシーンもある。

 姉妹や母娘って、顔は似てなくても、不思議と声だけはよく似るものなんですよね」

「ああ……」
と亜衣がなんとも言えない声を出した。

「別人だって聞いてはいたけど。

 顔が同じだから、声が同じでも、なんとも思わなかったわ」
と。

 本田はわかっていても、黙っていたのだ。

 恐らく、早くに気づいていたのだろうに。

 あづさの一番近くに居たのだろうからこそ。