「……あづさ?」
と衛が口の中で繰り返す。
廊下に、深く帽子を被った花屋風の女が花籠を手に現れた。
その後ろに慌てて現れたのは、ファミレスの前で、彼女を張れと言われていた流行だ。
まだ何事も起こっていないことに、ほっとしたようだった。
要を床に下ろした私は立ち上がり言う。
「そう。
彼女は、佐野あづささんです。
君の婚約者の佐野あづささんじゃなくて、本物の佐野あづささんよ、衛くん」
「くんはやめてください」
と言い、顔を赤らめた衛を、物珍しげに亜衣と麻紀が見ていた。
しかし、衛は昨日も私に敬語を使いかけていた。



