憑代の柩

 

 ふっと私は目を覚ました。

 女の顔が目の前にある。

「わっ」

 だが、それは声を上げる前に、掻き消えていた。

 長い髪の女だ。

 鋭角的な顎と鋭い眼がその髪の下から覗いていた。

 消えたあとも視界に焼きついている。

 溜息をつき、ベッドから下りた。

 さすがに、今、霊が出たばかりの場所に寝ていたくない。

 怖いというより、驚くからだ。

 かと言って、何処に行くといっても、この部屋自体、ちょっとなあ。

 廊下の隅に男はしゃがんでいるし。

 どの程度あづさに見えていたのか知らないが、普通の神経なら部屋を変わってる、と思った。

 そして、唯一まともそうな台所へ向かおうとして気づいた。

 洗面所に誰か居る。

 たぶん、霊だろうと思う。

 だから、霊に対して、こんな風にするのはおかしいと思いながらも、足音を忍ばせ、近づいていった。

 なんだかその霊が息を潜めている感じがしたからだ。

 下手な音を立てたら、逃げてしまうかもしれない。

 そうっと洗面所を覗き込んだ。