憑代の柩

 


「お目覚めになられてよかったです。

 あまり長く身体を離れていらっしゃると、ほんとに帰れなくなりますよ」

 私は彼女に向かい、微笑みかけたあとで、亜衣を向いて言った。

「水沢さん。
 まだ何も終わってはいません。

 外に出ててください。

 安全になったら呼びますから」

 亜衣は辺りを見回して言う。

「そうよ。
 今、あんたそっくりな女が花籠持って中に入って行ったのよ。

 それで、私……」

「そうですか。

 やっと出て来てくださったんですね。

 ――佐野あづささん」

 誰も居ない廊下に向かい、そう言ったとき、八代と目が合った。

「……お前が、さて、と言い出しそうだな」
と言う。

 はは、と笑い、

「すみません、先生。
 いいとこ取っちゃって」
と言った。