憑代の柩

 


 ドアを開け、中の惨状を見た水沢亜衣は叫んでいた。

「馨っ!」

 血の滴る床。

 だが、そこに倒れていたのは、男だった。

 こちらに背を向けているが、何処か刺されているらしく、身体の下に小さな血だまりが出来ていた。

 その側では、着物を着た年配の女が巨体の男に押さえ込まれている。

 昨日、咲田馨と名乗った女はウェディングドレスを血に染めて、男を抱き起こそうとし、払われていた。

「動かすなっ。
 俺を殺す気かっ」

 お前、わざとだろうっ、と罵る男は、出血多量を心配しているようだった。

「ナイフを抜いたら、さすがに故意かなとは思いますね」
という声が背後でし、長身の男が倒れている男の側に行った。

 馨はこちらを見、

「水沢さん。
 まだ早いですよ。

 後で呼ぼうと思ってたんです」
と呑気なことを言って笑い、血塗れの男に睨まれ、長身の男に呆れられている。

「大丈夫。
 この程度じゃ、私の経験上、死なないです」

「お前が医者かっ」
と倒れている男が突っ込む。

 なるほど、確かに大丈夫そうだ。