憑代の柩

 


「ねえねえ、衛さん、まだ来てないみたいなんだけど」

 一応、ワンピースを着ている友人が離れた位置から双眼鏡を手に、教会を覗いていた。

 暇だな、と思う自分も暇だな、と水沢亜衣は思っていた。

 わざわざ、こんなところまで来ているのだから。

 だが、此処へ来たのは、正装した衛を見たかったからだけではない。

 なんだかんだで、あの女のことが気になっていたからだ。

 本物のあづさとは対照的に明るく笑うが、それでいて、退廃的な雰囲気がある。

 何か大事なものを捨てては生きてきたような。

「あれ? お花運んでるよ。

 私たちも花くらい届ければよかったかな」

 その言葉に、貸してっ、と双眼鏡を奪いとる。

 あんな事件があったのに、人に花を運ばせたりするだろうか。

 そんな疑念を感じたのだ。

 教会の裏手に入っていく人影が見えた。

 深くキャップを被ったその横顔。

 ……まさか。

 いや、そんなはず――

 彼女は随分前に教会に入ったはずだ。

 鼓動が速くなる。