憑代の柩

「それだけですよ。

 どうします?
 要先生を警察に突き出しますか?

 ようやく貴方の望んでいた証言が取れたんですから、それもいいかもしれないですね」

「証拠が無い。
 死体も無い」

「死体なら作ればいいじゃないですか。
 私を殺せばいい」

 あのな、という顔で衛は見る。

「同じ顔ですよ。
 いや、ちょと死体の活きが良過ぎますけどね」
と言うと、……莫迦が、と掠れた声を吐き出した。

「要先生は、貴方と馨さんの間には何もなかったと言ってましたが、本当ですか?」

「何もない。
 彼女は僕を好きなわけじゃなかったから。

 何もなかったのと同じだ」

 なかったのと同じ――

 そういう言い方を衛はした。

「じゃあ、馨さんはなんで貴方と?」

「……要の横領を知っていると言った。
 その補填を僕がしてもいいと」

 そこで吹き出した私を衛は、なんだというように見る。

「いやいや。
 なんだか可愛らしくて」

「可愛らしい?」

 聞き違いかと言うように衛は訊き返してくる。