憑代の柩

「あの人、咲田馨さんをご存知だったんですか?」

「衛の数少ない友人の一人だからな。

 衛が馨を好きなのも知っていただろう」

「あの……馨さんと衛さんの間に、何かあったっていうのは本当なんでしょうか」

「見たからな」

「え――」

「衛が馨にキスしているのは見たことがある。

 それが馨の意志だったかは知らないが。

 ま、あの様子じゃ、あのときはそれ以上は何もなかったんじゃないか?」

「でも……馨さんは貴方の婚約者だったんですよね」

「俺が馨のために、病院の金を横領して、秋川に融資してたからな」

「え。
 それでってわけじゃ」
と言うと、

「それでってわけだ」
と言いながら、ハンドルを切る。