憑代の柩

「生徒ですよ」

「でも、そうだったんだろう?
 そうでなきゃ、俺が馨を殺したくなるわけがない」

「殺したんですか?」
「殺したと思うか?」

 彼はロッカーに縋り、何もない薄暗い天井を見ていた。

 無機質な部屋の中でぼそりぼそりと語る。

「馨は流されていく衛の父親を追って、川を下ったようだった。

 だが、見失い、自らも流されたようだった。

 俺は川から上がって倒れている馨を見つけた」

 その光景を思い出すように目を閉じる。

「倒れていた彼女の側に行き、その首に手を伸ばした」

 要は目を開け、こちらの首に片手を伸ばす。

 私は逃げなかった。

「絞め上げると苦しそうにしていたよ。

 それで、ああ、生きてるんだな、と思った」
と要は笑う。

「それで――?」

 首に大きな手を当てられたまま、間近に見上げて問うと、要は言った。

「首を絞めて、その場に放置した。

 だが、死体は見つからなかったな。

 衛が見つけて、葬ったのかもと思ったが」