憑代の柩

 こちらを振り向いた男は突然、喉と胸をかきむしり始めた。

 そのまま倒れる。

 そして、助けを求めるように手を伸ばして、消えた。

「どうなった?」

 何も見えていない衛が側に来て訊いてくる。

 ……最悪だ。

「霊の人は喉と胸をかきむしって倒れて死にました。

 可哀想に。

 死んだときを時折思い出して、再現してるんですね」

 衛は後ろを振り返っていた。

その視線は、あの押し入れを見ている。

「あそこには今、何が?」

「使われてない布団袋とかです」

「結構空いた空間か?」

「……そうですね。

 まあ――

 あそこに居たってことでしょうね。

 死体として」

 そうまとめる。