憑代の柩

「あの女は何処だ」

 振り向いたが、誰も居ない。

 衛がこちらに来ようとしたので、手で下がらせた。

 声のした耳の方。

 白く簡素な下駄箱を向いて言う。

「やはり、霊は騙せないようですね。

 ま、中にはトンマな霊も居るかもしれませんけど。

 私は佐野あづさじゃありません。

 お話を聞かせてください。

 姿を現して」

 間があった。

 早くしないと、痺れを切らした奴らが出てきそうだと焦ったが、じんわりと滲むように霊は姿を現した。

 まだ警戒しているのか、はっきりとは見せてこないうえに、下駄箱に多少被っているが、その背格好くらいは確認できる。

 若い男のようだった。

「貴方は誰ですか?」

 霊が姿を現したことを周りに知らせるように声を上げた。