憑代の柩

「その比じゃない勢いで絞められましたよ。

 仕方ないです。

 あのとき、私、あづささんの霊が洗面所に居るのわかってたんですから」

 わかってて止められなかった自分は、やっぱり衛が好きなのだろうか、とちょっと思った。

 何か言いかける衛の前で、私は、しっ、と口許に指先を当てた。

「誰か来ました」

 ちょっと此処に居てください、と衛を置いて、玄関に行く。

 あの足音だ。

 息をひそめる。

 ドアの前で、また止まった。

 魚眼レンズから外を覗く。

 誰も居ない廊下。

 手すりと近所の家の屋根と、暗い住宅街しか見えない。

「あの女は何処だ」

 いきなり耳許で声がした。

 霊現象に慣れている自分でも、さすがに身を竦めた。