憑代の柩


 


 翌朝、一般病棟の看護師たちにも花を贈られ、佐野あづさとなった私は衛とともに玄関へと向かっていた。

 ロビーに居る患者たちが何事かと振り返る。

 医師まで総出で見送っているからだ。

 この病院も御剣グループのものらしいからな、と思いながらも、やはり、慣れない状況がこそばゆい。

 あっちの病棟に居たのだから、ひっそりと出て行きたかったのだが。

 そこはやはり、『生きているあづさ』の顔を見せねばならないようだった。

 笑顔で挨拶を返しながらも、ちら、と手の中の鮮やかな花束を見る。

「……不吉な」
と呟いた。

「花屋が花を嫌うな」

 ぼそりと言ったあと衛は、
「腕くらい掴め」
と言ってくる。

「なんでです?」
と問うと、彼は前を見たまま、

「婚約者だからだ」
と素っ気なく答えた。

「それに、あづさは結構積極的だったというか」

「あ~、そうなんですか。
 そんな顔はしてないですが」

「そこなんだ」
と衛は困ったように言う。